2007/10/23 カテゴリ: 食の安全 : 

食を揺るがすいろいろな次元の問題(6)その3

−「だまされた!」と感じて納得する消費者はいない−

前回は全く合法的な、しかし消費者が十分状況を知らないような食品加工の話を書きました。

食品添加物による一種の模倣食品であり、その実際のところを消費者がどれだけ知っているかということを中心に述べました。

今回はそれとは少し違った意味で消費者に意識されにくい問題として、「実害がない可能性が高いが違法は違法」として処理されるケースについて考えてみたいと思います。






食品添加物の安全性については客観的な基準が世界にひとつだけ存在するというのではなく、国ごとに設けられた法律に適合するかどうかが決め手となります。

「国ごと」ということは例えば米国で使用許可されていても日本で許可されていないとかいった場合がこれにあたります。

米国で安全性が確認されているのであれば日本でも使ってよさそうなものですが、実際にはやはり法的に認められたものしか使えない、というのが原則です。

同じ人間であっても人種が違えば身体の性質も異なるかもしれない、という可能性を考えることは科学的です。

故に、日本の手によって安全と確認されたものだけを安心できる原料として輸入や使用を許すということになるのですが、場合によってはそのような安全性を確認していないだけ、ということもあり得ます。

そのような時、日本で使用することの必要度の高さを判断して安全性の評価が行われますが、通常非常に時間がかかってしまいます。

これは使用者の側、市場の側からすればもう少しフレキシブルにならないかと思いますが、法律がある以上それを遵守するという正論は強力なものですから、時々非常に大規模なリコールが行われることがあります。

新聞の社会面の下のほうに謝罪広告として、

「このたび弊社の製品に○○という食品添加物が含まれていることが判明した。これは日本の法律では使用の認められていないものであるため、その製品をすべて回収する。なお、この食品添加物○○は米国では使用が認められており、消費者が万一摂取された場合にも健康への影響はない。」

という趣旨のことが書かれているのをご覧になった方は多いことと思います。

これは「疑わしきは用いず」ということではなく、「他国であるにせよ科学的に安全性が評価されているが、日本の法律が認めていないので用いない」ということであり、専門家でなければなかなか納得するのが難しいような内容だと思われます。

一般消費者としては、健康への影響はないとわかっているのならわざわざ回収しなくてもいいじゃないかという思いと、日本の法律が認めていないのならばやっぱり危ないのではないかという思いが錯綜し、釈然としない感じが残ります。

(こんなことは実際めったに見かけませんが、逆にリコール告知広告として「これは万一摂取した場合重篤な症状が現れることがある。故に回収する。」と明言されていれば物騒この上もない。しかし論理的には納得が行きます。)

いずれにせよ企業側の品質管理責任として、これはいくら費用がかかっても回収というアクションを起こさざるを得ない問題です。

いろいろと込み入ったことを書きましたが、要するに国や企業(供給者)は一般消費者が何も知らなくても安心な食生活を保証するんだ、という考えを底辺に置いているということは確かなことです。

しかし私が、完全人造豚骨スープや人工霜降り肉の話などを持ち出したのは、食品加工の技術もとことんまで進化してきている現代日本社会にあっては消費者はもっと豊富な情報を得て、納得の行く判断機会を与えられるべきではないかということを思うからです。

また従来の物差しでは安全性や有効性が測れないような新しい食品や食品添加物が出現していることも同時に指摘しておかなくてはなりません。

私個人的な感想をいえば、果汁0パーセントであることを理由にある清涼飲料水を買わなくなる人より、豚骨スープが完全人造物であることを知ってそれを買わなくなる人の方が多いのではないかと思います。

また、米国で通常用いられているが日本ではまだ使用の認められていない添加物の入っている食品を買うかどうか(買える自由があるとしての話)と言われれば各人の判断によっていろいろ挙動は分かれるだろうと予想します。

どんなに専門的、法律的な首尾が整ったとしても、最終的に消費者が実際のところを知って「だまされた!」と感じるようではやはり問題がある。

供給側はそういう消費者の感性を見くびらないこと、行政側は消費者の選択力を信用すること、十分な情報を与えた後の判断は国民の判断力に委ねるのがむしろ良いのだと考えること、こういう考え方が重要なのではないでしょうか。

こういった専門家の出す結論と一般市民の直感が食い違う問題は別に食品分野に限ったことでもありません。

裁判の判決、政治家のマニフェスト、金融商品の情報提供のあり方、これらすべてに通底することでもあります。

次回の更新は11/1(木)です。