2008/06/26 カテゴリ: メタボリックシンドローム : 

メタボの人の手術

先月読んだ文芸春秋誌(6月号)の中に「外科医、メタボと戦う」と題する論説が目に留まりました。

それは私がこれまでにあまり聞いたことのないメタボ論でした。

引用が大変長くなりますが、とても印象的な表現が多いので、是非以下にご紹介したいと思います。

NTT東日本関東病院副院長の小西敏郎先生の日頃のご体験を交えたお話です。













(以下引用部分)
 ・・・(外科医である自分は)腹部の手術のため、皮膚を切開する。
太った内臓脂肪たっぷりの患者の場合、視界に広がるのは、胃や肝臓などの臓器を覆った真っ黄色の脂肪だ。
第一に厄介なのは、脂肪が邪魔で、病巣があるはずの臓器がよく見えないことである。
第二に、脂肪の中には血管があるために、出血もしやすい。
したがって、メタボ患者の手術は黄色い脂肪と真っ赤な出血との格闘である。
患部がよく見えず、手探りで手術を進めるしかない。
雪と泥の中で野球をしているようなもの、といえば、少しはイメージが伝わるだろうか。
そのため、手術にかかる時間も、非メタボ患者に比べ、メタボ患者の方が長くなる。
患者にとっても、外科医にとっても手術時間は短い方がいいに決まっている。
(中略)
外科医としては、脂肪まみれの手術は、通常以上に神経を使ううえに、時間もかかり、鮮やかな手術ができたという達成感も得にくい、という“三重苦”である。
その分、疲労と消耗は大きい。私たち外科医が集まると、「肥満の患者さんの手術代は通常の二倍にならないものか」とつい、ぼやきが出るほどだ。
またメタボ患者は術後のケアも難しい。
傷が治りにくく、縫合してもちゃんと塞がるまで時間がかかるのだ。
感染症や合併症の危険性も高い。
とにかく手術において、肥満は百害あって一利なしと言っていいだろう。
私は、胃や食道を中心とした消化器の手術を手がけて、三十年になる。
私が一人前の外科医となった頃には、まだこういうメタボ患者に出会うことは少なかった。
しかし、近年では内臓脂肪と格闘しないことのほうがむしろ稀である。
特に、男性は外見的にはスマートでも内臓には驚くほど脂肪を抱えている人が少なくない。
反対に、女性はふくよかな人でも、皮下脂肪は厚いが、内臓脂肪はそれほどついていないケースが多い。
そういえば、メタボの指標としての腹囲の数値が問題とされた。
男性85センチ以上、女性90センチ以上と、女性のほうが大きいのはおかしいと批判されたのだが、外科医の実感としては、この基準は納得できるものがある。
(後略。引用終わり)


こういう実感は手術をたくさんこなされる医師ならではのものに相違ありませんが、私たちが通常CTスキャン像などで見ているものを実物として扱ってみればこんなことになるということです。

もちろん手術などせずに済む人生を送れればそれに越したことはありませんが、実際の現場において、小西先生のようなベテランの方の感想として聞いてみれば是非そういうやっかいな内臓の状態にならないようにしようという気になってきます。

そして皮下脂肪の男女差なども非常に説得力があります。

また先の学会(日本抗加齢医学会)で聴いたところによれば、肥満している人ほど肝臓癌の発症率が高いという調査結果もあるそうです。

それならばなおさらのこと、できるだけお腹の中はきれいにしておきたいものだ、と思います。

ところで、小西先生ご自身も以前はメタボ体型でいらしたのだそうですが、ちょっとした手術入院をされたことをきっかけにメタボも同時に克服され、今は“外科医泣かせ”のメタボ体型には戻るまい、と心に誓っておられるのだそうです。

「行動変容」を起こすのには、こういうプロの医師にとっても相当なきっかけが必要なのだなあと、改めて思いました。

次回の更新は7/3(木)です。