2008/07/17 カテゴリ: L-カルニチンについて : 

L-カルニチンの年齢は30億才?

直感的になかなか信じられないことではありますが、地球に魚類が出現してから4億年ほどの間に両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類というグループが現われ、私たちヒトもその先端に連なって生きています。

生物の進化はこのように魚が哺乳類になるといった、目に見えるレベルのものもあれば、太古の昔に目に見えない分子が出現し(そもそも「目」などどこにもなかったのですが!)、それが延々と受け継がれていって、ある生物の身体の中で重要な役割を演じるようになった微小なレベルの変化もあります。

今日はL-カルニチンについてこのような観点から考えてみたいと思います。











L-カルニチンは私たちの筋肉にも含まれていますが、羊や牛などの筋肉にも同じように含まれており、生命維持に必須の成分として働いています。

この成分を多く含む部位が哺乳類の筋肉であることは事実ですが、鳥類や魚類、カニなどの甲殻類や、軟体動物である二枚貝にも少々の存在が確認されています。

私などは普段わかりやすいように「L-カルニチンは哺乳類などの肉に含まれており、野菜や果物には含まれていません」という風に説明することが多いのですが、厳密には「野菜や果物にはほとんど含まれない」というべきところです。

この違い、栄養学的には些細なことに過ぎませんが、生物の進化という観点からみれば「ほとんど含まれていない」と「全く含まれていない」とではまるで意味が異なります。

なぜなら、「植物に全く含まれていない」ということになれば、少なくともこの分子(L-カルニチン)は進化の過程で、初期の哺乳類が地球に出現してから(1−2億年前に)発明された分子だ、だから哺乳類しかこれを持っていないのだ、ということが理論上推定されるのに対し、「わずかながら植物にも見出される」ということであれば、L-カルニチンがこの世に出たのは、動物と植物がまだ区別されなかったほど昔のことだということになり、それは20億年以上も前であったということになります。

実際L-カルニチンは、バクテリアなど原核生物といわれる最も原始的な生物にも見出されていますので、L-カルニチン分子の年齢が「30億才以上」であることはほぼ確実と思われます。

こう考えてみれば、L-カルニチンが鳥にもカニにも存在するのはあたりまえ、逆にこれを持たない生物はほとんどないということになります。

今日知られているL-カルニチンの最も中心的なはたらきは、脂肪を燃焼の場であるミトコンドリアの中に運び込むことです。

30億年前の生物といえばまだミトコンドリアを持つものはひとつもありませんでしたので、これはちょうど電車がないのに切符が発明された、鉛筆がないのに消しゴムが発明されたという状態に似ています。

そんな切符や消しゴムに存在の意義はない、と考えられますが、それはあくまでも人間が知る範囲で想像していることに過ぎません。

植物は動物のように脂肪を摂取したり、ミトコンドリアでどんどん燃焼させたりするという必要がない生き物です。

だからL-カルニチンは植物の中にあっても仕事らしい仕事をしているはずがない、と人間は考えていますが、それはおそらく不遜なこと。

きっと私たちが知らない役目を負いながら、ミトコンドリアや長鎖脂肪酸を使って活動する生物が出現するまでの非常に長い間、何十億年も黒子として市民権を得てきた分子に違いありません。

そういうところに隠されている謎が解かれれば、L-カルニチンの働きについて、私たちは現在よりも革命的に深い理解に到達できるかもしれません。

次回の更新は7/24(木)です。