2011/11/02 カテゴリ: つれづれ : 

健康常識の変遷3(乳酸は疲労の原因である)

私がはじめて L-カルニチンについて解説論文を書いたのは2002年11月のことでした。

もうかれこれ十年近く前のことになります。

そこで私はこんなことを書いています。

「生命活動のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)の形で生産される。我々哺乳類では、ATPは主に二通りの経路から調達される。一つは肝臓や筋肉中に貯蔵されているグリコーゲンからブドウ糖という現ナマを即金的に払い出してATPを獲得するルート(解糖系)であり、もう一つは小切手のようにやや手続きを要しながら大量のエネルギーを調達できるルート(脂肪酸のβ酸化系)である。我々の身体はエネルギー需要の緊急性に応じて二つの調達ルートを自動的に選択する。100メートル走や相撲のような緊急時には最初のルート即ち『解糖系(現金系)』から無呼吸的にATPを獲得する。このルートは(たとえは悪いが)悪徳金融業のように必要なとき気前よくスピーディーな原資調達が可能である反面、借出した現金(血中ブドウ糖)が尽きてしまえばそれまで、あまつさえ乳酸の蓄積による筋肉痛という形で後日シビアに回収を迫ってくる。(後略)」

ここではおおよそ、エネルギー源として使われるブドウ糖と脂肪の違いを述べたかったわけですが、今日の目で見て明らかに修正すべき部分があります。

それは「乳酸の蓄積による筋肉痛という形で後日シビアに回収を迫ってくる」というところです。

この当時は乳酸が疲労や筋肉痛の原因だという説が一般的でした。





それから2年ほどして、乳酸は実は疲労の原因ではなく、ひとつの過渡的な結果であること、またエネルギー源としても利用されることなどが信頼できる研究によって明らかにされました。

つまり今日では乳酸は悪玉ではなくなっているわけです。

これなどもここ最近おおいに変化してきた健康常識の一つだといえます。

ちなみに乳酸によって筋肉痛が起こるということもなさそうです。

当時私は L-カルニチンを摂取することによって乳酸が代謝されやすくなるという事実と、L-カルニチンの摂取が筋肉痛を抑えるという現象を結び付けて理解していました。

しかし最近では、筋肉痛は激しい運動によって筋肉組織でのエネルギーや酸素の不足、ならびに活性酸素の発生によって筋肉細胞が損傷する結果起こるということが明らかにされてきています。

そしてL-カルニチンが筋肉痛を抑制するという現象は筋肉細胞の損傷を抑えるというメカニズムに基づくものと理解されるようになってきています。


次回の更新は11/10(木)です。