執筆者の紹介

王堂 哲
ロンザジャパン社勤務。

L-カルニチンに限らず、すぐれたサプリメントがきめ細かく研究され、正しく用いられながら日本人のQOL向上に役立つことをテーマとして活動している。


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カテゴリ : つれづれ : 
2018/09/27 (9:00 am)

AIなんてチャチいもの!

国によって長さや重さの単位は少し違いますが、どこの社会であっても単位はたいてい人間が感知できるようなものになっています。

たとえば長さであればまずはミリメートルからキロメートルまでの単位があれば日常生活上のニーズはほぼカバーできます。

重さならミリグラムからトンまででしょうか。

これ以上に大きかったり小さかったりする場合については様々な専門分野で単位が追加されます。

中でも飛びぬけてスケールの大きな単位は「光年」でしょう。

10億光年というのは光の速さで10億年進んだ距離のことですが、これがどれほどの量であるのかはさっぱりピンときません。

小さい方では10のマイナス10乗メートル、という付近で使用されるÅ(オングストローム)という単位がありますが、これなどは原子や分子の大きさを表現するときに用いられます。

ところで、私達の身体を形成している細胞は20〜30兆個あると推定されています(60兆個という従来の通説はどうも誤りだそうです)。

そのうち肝細胞はだいたい20ミクロン(μm)という大きさです。

この中に核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体などの細胞内小器官(オルガネラ)が浮かんでいる、そんな図が理科の教科書に載っていました。

これらはもちろん肉眼では見えませんが、電子顕微鏡を使えば見えます。

しかしどうしても見えないものがあります。

それは細胞やミトコンドリア、核の中を満たしている液体、その中に溶け込んでいるさまざまな物質です。

中でも化学反応の進行を促している酵素タンパク質がありますが、肝細胞の中だけでもおそらく何百種類もの酵素があると思われます。

その酵素が関与する化学物質もそのまた何倍かの種類存在しています。

そういった目もくらむような物質が細胞質という液体の中を飛び交いながら(実際羽根もスクリューもない小さな分子が、その分子にしてみれば「極めて広大な」細胞内の空間をどうやって間違いなく目的地点まで移動しているのか、からっきし想像もつきませんが)それでいて整然と一定の代謝が実現しているのです。

生化学という研究分野の教科書にはこういった分子の振る舞いについて事細かに説明されているのですが、実際にはそういった無数の化学反応が細胞内のあちこちで(互いに連携をとりながら!)同時進行しているのです。

これが20ミクロンの肝細胞の中で日夜起こっているドラマです。

それが寄せ集まって肝臓という器官が出来、さらに別の臓器でも個別に、それぞれの複雑さを持ちながら、そして最終的には一つの個体として電車に乗ったり、選挙をしたり、戦争をしたり、そんなことをしているわけです。

こんな複雑なものを作れるのは神しかいない、と思いたくなります。

これが30数億年かけて進化してきた私たち生物の姿です。

生物の進化というものにも私たちは情報に慣れすぎていて、「ああそうか」と結論だけを覚えておしまいにしていることが多いのですが、実は私たちにはピンとこないほど長い時間の中で、生命の複雑怪奇、精確無比なシステムは気が遠くなるくらい奇跡的な、途方もない偶然の連続、無数の試行錯誤の結果、改良に改良を重ねた究極の作品なのです(しかもまだ未完成の!)。

このシステムがあまりにも微細であり、またそれを完成させるに必要とされた時間の幅が長すぎて、結局私たちは自分自身のことについてピンとこない、そんな状態で毎日を生きているのだと思います。

AIが発達して自動運転の車や空飛ぶタクシーができたとしても、それを動かしたり制御したりするシステムの複雑さは20ミクロンの肝細胞の中のそれに比べたら実にチャチなものに相違ありません。


次回の更新は10/4(木)です。

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