2020/07/30 カテゴリ: つれづれ : 

塵も積もればコロナとわかる!

遺伝子はDNAというひも状の物質が二重に綯(な)われた縄のようならせん構造になっています。

これをお湯の中に入れると縄がほどけて一本のひもがふたつになります。

この中にDNAのもとになる材料を入れておくと、いったんほどけた1本づつのひもに新しいペアのひもがつくられて「まったく同じふた組の縄」ができあがります。

実際にはDNAのもとになる材料だけではダメで、ビーズ玉を直線につなげながら縄に編んでゆくための材料や道具が必要です。

細かいビーズ材料のひとつひとつ(これをモノマーといいます)が並んで作られた長い行列状のひもは「ポリマー」と呼ばれます。

「ポリ袋」で有名なポリというのは「エチレン」というモノマーがたくさんつながってできる「ポリエチレン」という物質(ポリマー)の略称です。

材料となるモノマーがプロピレンという物質であれば、つないでできる完成品はポリプロピレンという日常生活でおなじみのポリマーになります。

ここで使われるポリマーをつくるための道具は「ポリメラーゼ(Polymerase。「ポリマーを作る酵素」という意味)」です。

ところで、さきほどはじめ1本だった縄がお湯の中でいったんほどけて、そこから「まったく同じ2本の縄」ができるところまでお話しました(つまりポリメラーゼの力で縄が2倍に増えたわけです)。

今度はその2本の縄をもう一度お湯に入れると、ほどけて4本のひもになります。

ここに新しいビーズ材料(モノマー)とポリメラーゼを入れておくと、縄が4本できあがります。

はじめ1本しかなかった縄ですが、このような「ほどき」と「再生」を繰り返すと、2本⇒4本⇒8本⇒16本というふうにネズミ算式に数が増えて行きます。

このような操作を何度も繰り返すことを、連続した鎖のつながりにたとえて「鎖反応(chain reaction)」と呼びます。

つまり遺伝子(DNA)の「ほどき」と「再生」を多数回行うことで最初少ししかなかった遺伝子をあっという間にものすごい数に増やすことができます。

たとえば鼻の粘膜から採取したサンプルにDNAが含まれている場合、これをこの連続鎖反応にかけてやるとごくわずかしかなかったDNAがたちどころに増幅され、ついには目に見える量にまで増やすことができるのです。

「塵も積もれば山となる」のイメージそのものです。

実際ここまで来れば遺伝子がどんな文字配列をもっているかを目で見て調べることもでき、予め手がかりとしてわかっている新型コロナウイルスの文字配列と一致していることがわかればそのサンプルを採取した人は「新型コロナウイルス陽性である」と判定できます。

このあたりは、犯人の指紋が事件現場の指紋と一致するかどうかを調べるやり方と似ています。

というよりこれはいわゆる鑑識で行われる「DNA鑑定」そのものです。

つまり新型コロナをDNA鑑定することが現在のウイルス対策のポイントになっているわけです。

さて、ここまで読んでいただいた方はすでにお気づきのことかと思います。

ポリメラーゼ(Polymerase)を用いた鎖反応(Chain Reaction)。これこそが毎日ニュースで聞いているPCRにほかなりません。

PCR法を発明した人はノーベル賞を受けています。

この手法は新型コロナのような疫学調査のみならず、血縁関係の確認や犯罪捜査あるいはさまざまな化石から痕跡程度に得られる遺伝子からもとの動植物の素性を解明するなど、じつに便利なツールとしてあちこちで活躍しています。

次回の更新は8/6(木)です。