2020/08/20 カテゴリ: つれづれ : 

「免疫」という迷宮

私の家にも何冊か免疫関係の本があります。

ですが、その多くがもはや今日の役には立たなくなっています。

私としては記憶に新しい部類の(笑)、学生時代から社会人になりたての1980年前後ころの話。

ポマトという作物が生物工学的な技術でつくられて評判になりました。

これはポテトとトマトの細胞を融合して作出されたもので、地下にジャガイモが、地上にトマトができるという驚きの発明です。

もともとジャガイモとトマトはいずれもナス科の植物なので親戚関係にあるものですが、それにしても、もしそれが実現したら作付面積はずいぶん節約できるだろうなと思いました。

その後の経緯からみて遺伝子組み換え食品については根強い警戒感がありますので、残念ながらポマトが市場に出回るには至りませんでしたが、バイオテクノロジーの象徴として非常に強いインパクトのつよいニュースでした。

これ以外にも、1970−80年代を皮切りに細胞融合のほかインターフェロン、インターロイキン、免疫分子の多様性の解明、T細胞、B細胞、モノクローナル抗体、PCR法、TLR、遺伝子治療、抗体医薬、ガン免疫療法・・・と目の回るような事実の発見や革命的な発明が続々と発表され、ノーベル賞もたくさん出ました。

この中には1950年代あたりにすでに端緒が開かれていたものも多いのですが、70年代以降一気に花開いてきたという感じです。

とくに日本人研究者の免疫分野での活躍にはすばらしいものがあり、文字通り世界をリードしてきました。

さて、新型コロナ以降「免疫」という言葉を聞かない日はないくらいですがこの分野ではそもそも「どこまで何がわかっているのか?」ということが非常にわかりにくいのが特徴です。

世界中の選りすぐりの研究者が束になって日夜しのぎを削っていますが、ひとつのことがわかると新しい謎がたくさん増えてくる感じです。

たとえば免疫は一度できると二度かからないという古典的な、誰もが知っているようなことにしても、その本質的な成り立ちについてはまだ迷宮の中、というのが実際のところです。

そんな中、新型コロナのような場合に「有識者」「専門家」というのは何でも知っている人、と一般には思われがちです。

しかし「自分は何でも知っている」というような人は実は本当の専門家ではありませんから、正確なことを言おうとすればするほど公式での発言がむつかしくなります。

一方政治や経済は単純明快な結論を求めます。

いずれにせよ免疫という迷宮があまりにも大きく深いためこういったコミュニケーションのむつかしさはそう簡単には片付かないと思います。

愛着のある本もあるのですが、どんどん新しいものに取り換えて行かなければならないなあ、とため息がでるような、それでも楽しみなような今日この頃です。

次回は8/27(木)に更新の予定です。