2021/05/20 カテゴリ: L-カルニチンについて : 

動物はL-カルニチンによって「動く物」になった

生物が海水から誕生したということはほぼ確かなことと考えられています。

私たちの身体の中の60%は水でできていること、またそこに含まれている基本的な元素の組成が海水に似ていることは生命の由来を強く示唆する状況証拠です。

つまり私たちは自分の体内に海を汲み取ることによって陸に上がってきたことになります。

私たちの身体を覆っている皮膚は水に溶けないたんぱく質を含んだ一種の脂の膜ですが、それは通常空気と接しています。

その皮膚の層の下側には組織液や血液(つまり水)があります。

さらに組織液の下には多彩な内臓を覆っている上皮(やはり脂の膜)があり、その上皮の下にはまたべつの組織液(つまり水)があります。

ミクロの観点でみれば内臓(器官)はさらに細胞でできていますが、細胞自身は細胞膜(やはり脂の膜)でできており、細胞膜の外側は血液や組織液、リンパ液(つまり水)と接しています。

そして細胞膜の内側には核、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなどの細胞内小器官(オルガネラ)が浮かんでいますが、その各々は脂の膜で区切られて細胞質という水に浮かんでいます。

脂の膜で区切られたオルガネラの袋の中にはまた水があり、そこにDNAやさまざまな酵素などが溶け込んでいます。

このように皮膚と接する空気からはじまって幾重にも続く入れ子構造ですが、オルガネラの中の水空間までくるとそこが終点と考えられます。

身体の成り立ちを一層づつ辿ってゆくと、水→脂の膜→水→脂の膜→水→・・・→水という巧妙な階層構造になっていることがわかります。

もし、オルガネラや細胞を形成している膜が脂ではなくオブラートのような水溶性物質でできているとしたらたちまちにしてグジュグジュに崩れてしまうほかありません。

言い換えれば水を蓄えておく袋はどうしても水に溶けない材質(すなわち脂)でできている必要があるわけです。

生体の膜の多くは「脂質二重膜」という基本構造でつくられています。

皮下やお腹にたまっている脂肪が燃料として使われるためには血流に載って長旅を経ながら筋肉や肝臓などの細胞に入り、最終的にはミトコンドリアの内部にまで到達する必要があります。

基本的に水で満たされた身体の中で脂という燃料を運搬したり使いこなしたりすることは非常に大変なことなのですが、実際にはカイロミクロンや油滴、リポタンパク質といった巧妙な数々の仕掛けによって営まれています。

そして脂肪の最終目的地である発電所(ミトコンドリア)は脂質二重膜がさらに外膜と内膜に分かれていて「脂質四重膜」のようになっています。

この膜を脂肪(遊離脂肪酸)が通過するためには特別な運搬役(L-カルニチン)が必要になります。

パソコンやスマホでファイルの階層構造に入ってゆくためにはさまざまな認証やパスワードが要求されますが、ミトコンドリアに脂肪分子が入るためのパスワードはL-カルニチンだけが知っているというわけです。

脂(油)を燃料として利用しながら莫大なエネルギーを得ているのが「動く物」としての動物の最大の特徴ですが、L-カルニチンという分子は進化の過程で専ら動物だけが自由自在に使いこなすようになった不思議な分子です。

L-カルニチンが野菜や果物にほとんど含まれておらず、動物の動きを支えている筋肉に最も含量が高い理由はそのへんにあるのではないかと思われます。

次回の更新は5/27(木)です。