執筆者の紹介

王堂 哲
ロンザジャパン社勤務。

L-カルニチンに限らず、すぐれたサプリメントがきめ細かく研究され、正しく用いられながら日本人のQOL向上に役立つことをテーマとして活動している。


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カテゴリ : つれづれ : 
2008/04/17 (7:05 pm)
医薬品の開発に臨床試験というステップがあります。

その目的は候補となる医薬品を実際の患者さんに試して効き目を確かめることにあります。

そこで重要なことは「患者さん」が確かにその試験目的の疾患をもつ患者さんであることを保証することです。

つまり、ある薬がAという病気を治す目的で開発されたなら確かにそのAという病気にかかっている人を対象に選ばなければならないということです。











例えば、II型糖尿病の医薬品の臨床試験を行う場合、その被験者は確実にII型糖尿病にかかっている人でなければなりません。

それで、たくさんの候補の中からII型糖尿病の患者さんを探すことになります。

その過程をスクリーニングといいますが糖尿病の場合、「真の患者さん」を選び出す初期の段階で一定期間運動やカロリーコントロールの指導を行います。

そのような運動療法や食事療法を経ても改善しない人を集めることによってはじめて目的とする薬の効き目を評価できるようになるわけです。

ところが、実際そういうことを始めてみると、被験者候補の人に運動とカロリーの管理を施した段階で半分以上の人が治ってしまった、ということがよくあるのです。

治ってしまった候補の方にしてみれば被験者スクリーニングに参加して健康を取り戻せたのですから、こんなに結構なことはありません。

しかし薬を開発する側はその分被験者集めに苦労することになります。

とくに糖尿病や高脂血症などのように栄養過多や運動不足が原因となって起こる病気の場合、そのような節制によって「自然治癒」が見られやすいという傾向があります。

逆に言えば、もはや運動や食事の状況を改善しても治らない場合にこそ医薬品は本来の使命を発揮するということでもあります。

医薬品開発で行われるこのような生活改善指導は「介入」と呼ばれます。

介入されることによってこれまでの食習慣や運動習慣が変わります。

このような生活習慣の変化のことを「行動変容」といいます。

「なくて七癖」とか「習慣は第二の天性」とかと言われるとおり、人はだれでも普段の生活の中で個々人のスタイルを持っています。

その生活スタイルが栄養過多と運動不足である場合、何年か経てばメタボリックシンドロームに近づく可能性が高くなります。

一般の人は通常誰にも介入されずに暮らしていますから、なかなか容易に行動変容することができません。

やるとなれば自分自身でやらなければなりません。

そのためのあの手この手がいわば世の中にあふれかえっている、昨今の健康世相をそんな風に考えることができるかもしれません。

新しく買った乗馬マシーンに乗りながらテレビを見ること、ビリーズブートキャンプでかなり過激な運動をはじめること、などなど。

これらはすべて行動変容のきっかけが販売されているようなものです。

サプリメントを試すこともその一つかもしれません。

せっかく買ったサプリメントが無駄にならないように、そう考えてカロリーコントロールやちょっとした運動を始めるとすれば、それは理にかなった成果につながる可能性大だと思われます。

一方逆に「このサプリさえ飲めばもう不摂生しても大丈夫だ」などと考える人もあるかもしれませんが、これはもちろん要注意です。

次回の更新は4/24(木)です。
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2008/04/03 (11:20 am)
最近グリシンという製品が品薄になって価格が高騰している、という話を聞きました。

グリシンというのは私たちの身体に必要なアミノ酸の一種です。

この価格がなぜ高騰しているのか?ということについて少し調べてみました。








グリシンはある農薬(除草剤)を製造する際の原料として使用されています。

これは除草剤なので、ふりかければどんな植物も死滅します。

しかし、一方この農薬をふりかけられても平気で生きてゆける作物が作られており、いわばこの除草剤と作物をセットで用いれば不要な雑草だけが駆除され、必要な作物を難なく得られることになります。

このような作物はいわゆる遺伝子組み換え作物の代表例です。

遺伝子組み換え農作物については、国によってこれを認めるところと認めないところがあり、目下のところ食糧作物としての普及は限られています。

しかし、地球温暖化対策としてエタノールなどのバイオ燃料を生産する目的であればこういう作物は世論の反対なく受け入れられることになります。

というわけで、昨今バイオ燃料の原料としての遺伝子組み換え作物の作付けが世界的に活性化しており、そこで使われる除草剤の需要が格段に高まります。

それがグリシンというアミノ酸の供給が世界的に逼迫している理由だというわけです。

(除草剤に耐えられる性質<除草剤耐性>をもった遺伝子組み換え作物については、その安全性に問題ありとする見解がある一方、十分に安全であるとする科学的なデータもあります。これは多分に、人間のもつ感性にも絡んだ問題なので、必ずしも科学で割り切れるとは限らない大きな課題ですが、ここではその議論には触れないこととします。ただ、除草剤耐性をもった作物を作ること自体は、それが便利であるという以外に、使用する農薬量が通常の作物よりかなり少量で済むという「環境にやさしい面」もあることは言っておきたいと思います。)

ともあれ、「風が吹けば桶屋が儲かる」という小話さながらに、このグリシンという一般には聞きなれない物質の供給が逼迫している状況は意外なところで私たちの生活に密着した問題なのだということを象徴的に示しているように思われます。

考えてみれば、原油、食品、動物飼料の高騰といった昨今リアリティー高く取り上げられるようになった切実な状況はすべてこの「風が吹けば・・・」式の複雑な連環において理解することができ、またそのようにしなければ理解できない問題だといえます。

次回の更新は4/10(木)です。
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2008/03/27 (3:14 pm)
今年に入ってから中国餃子事件(1月29日)が起こったときには、これは確実に今年の10大ニュースの一つになるだろうと思いました。

ところが2月になるとイージス艦「あたご」による漁船沈没事件(2月19日)、そして3月には新銀行東京の巨額損失事件(3月12日頃)、揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持(3月17日頃)、急激な円高株安問題および米国経済の不安本格化(3月18日頃)、チベットの動乱事件(3月19日)、日銀総裁の後任が決まらない話(3月20日)などの出来事が続けざまに起こりました。






そしてこのどれもが10大ニュースの候補になり得るような、ただならぬインパクトを持っているように感じられます。

これらの問題の特徴を考えてみると、例えば以下のようなことが挙げられます。

(1)どれも問題が大きすぎて、どこから着手すればよいのかがわかりにくい

(2)すべての事件において、その根本に政治的な深い思惑が絡んでいる

(3)思惑の深さや複雑さからみて一朝一夕に解決できそうにない

(4)事実、解決のアクションは入り口付近で頓挫し、停滞を余儀なくされている

(5)すべて政治的問題であるのに、政府や国会の対応に期待を持てない

さらにこれらを包括する雰囲気をいってみれば「無力感」でしょう。

そういえばこのブログでも昨年食品の安全食糧自給率に関して考えてみましたが、どこから考えはじめてもその規模の大きさに翻弄されそうな感じにとらわれました。

今年に入ってなお、その問題は強調されてきています。

先に挙げたような特徴は特徴として指摘できるものの、より深刻なことは、どれひとつとして解決を見ないまま新聞もテレビもどんどん新しい衝撃的なニュースに更新され、まるで電車から見る窓外の風景のように「大事件」が流れていって人々の記憶から葬り去られてしまう、そのことではないでしょうか。

餃子事件についていえば、科学的な究明の困難さというよりは「国家の思惑の壁」にぶちあたってしまい、まさに立ち往生しているというのが一市民として私の目に映るところです。

それともどこかでは着々と解明の作業が進んでいるのでしょうか。ともかくも餃子事件はその後に来た数枚のニュース記事の向こうに隠れてしまい、ことの真相はさらに遠のいてしまっています。

次回の更新は4/3(木)です。
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2008/02/14 (3:46 pm)
先般イチロー選手があるトーク番組で面白いことを話しているのを聞きました。

イチロー選手のトークにはいつも頭脳を急速に回転させて言葉を選んでいるような雰囲気があり、それでいて飛び出すフレーズがいくぶん禅問答に近い不思議な感じ、あるいははっと驚くようなキツネにつままれたような感じのするものも多いように思います。







今回は引退についての話でした。

「最高の引退」は「50歳で4割を打って身を引く」というケースだろう、と。

これは自分でも笑いながらの言葉でしたが、逆に言うとそれくらい引退の決断をするということは難しいことだということが言いたかったようです。

でもイチロー選手でなければ言えないことだなあと感心しました。

もうひとつ、どうなったら引退するかに関して「ハラが出てきたら引退します」という全く別の面白い表現もしていました。

イチロー選手によれば、野球はお腹が出っ張っていてもプレイヤーでいられる数少ないスポーツの一つだけれど、自分はそうなったらもう引退するんだ、というようなことを言っていました。

これはある種の美意識のようなものなのでしょう。

「お腹が出っ張る」というと、昨今はメタボリックシンドロームのことが頭に浮かびますが、そういった美意識と医学的なメリットが一致しているということは都合がよいものだと思います。

そういえば、最近私たちが少し調査してみたところ、いわゆるダイエットという言葉が20−40代の女性の「専売特許」ではなくなっていて、30代の男性、あるいは40−50代の男性にも意識が高まっているという傾向が出てきています。

40−50代の男性の場合は健康ということに結びつきが強いものと想像されますが、美しくありたいという気持ちの張りのようなものは中高齢期のQOL(人生の質)を高める上においてとてもよい効果がある、そういうことも科学的に裏づけようとする試みも活発になってきています。

それにしてもイチロー選手の「50歳で(ハラが出ず)4割を打って引退!」という目標は何ともすがすがしく響き、私もずいぶん元気をもらったような気になりました。

次回の更新は2/21(木)です。

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