執筆者の紹介

王堂 哲
ロンザジャパン社勤務。

L-カルニチンに限らず、すぐれたサプリメントがきめ細かく研究され、正しく用いられながら日本人のQOL向上に役立つことをテーマとして活動している。


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カテゴリ : 男性の不妊 : 
2011/06/16 (5:57 pm)
ともあれ、精子がカエルという高等動物の幼生(オタマジャクシ)と同じような形を獲得するためにはかなり手の込んだ工程が必要になります。

精子は当初は「精原細胞」という形態的にさして特徴のない細胞から始まり、分裂を繰り返しながらその数を増やし、かつ、あのユニークな形を整えてゆくのです。




精原細胞は睾丸で作られますが、初期の細胞分裂はその周辺にある副睾丸という臓器に送られて進みます。

副睾丸を解剖図などで見ると、一見小さな臓器なのですが相当多重に織り込まれていて、それらを広げるとなんと全長6メートルにもなります。

小さな細胞が数メートルを移動するためには2週間もの時間を要します。

この長い時間がポイントになります。

つまり、始めたった1個だった精原細胞が分裂を繰り返し、最終的に精液1ミリリットルあたりに5,000 〜 6,000万個を含むようにまでなります。

そして数ばかりではなく、きちんとした形を整えることも重要なプロセスです。

また、形がまともに見えても、卵子に向かってどんどん真っすぐに泳いでゆく「遊泳能力」を備えることも重要な条件になります。

実際、精子を顕微鏡で観察すると、頭と尻尾が離れてしまっているもの、形が歪んでしまっているもの、まともに見えても動きの鈍いもの、くるくると同じところを回るような運動しかできないもの、こういったものがたくさん混じっているのが見えます。

これら、/瑤足りていること、形が正常であること、きちんと泳げること、という3つの条件を揃えること、これだけの仕事をするためには非常に長い時間がかかります。

と同時にそれを完遂するためにはとても大きなエネルギーが必要になります。

このエネルギーの源泉が脂肪だということです。

それだけの脂肪を細胞内の発電所であるミトコンドリアに運搬するためには継続的に相当な量の L-カルニチンが必要になります。

これこそが、「L-カルニチンが精子細胞の周辺に超高濃度に含まれている理由」そのものだと考えられます。


次回の更新は6/23(木)です。
カテゴリ : 男性の不妊 : 
2011/06/09 (5:00 pm)
前回 、男性の生殖細胞周辺には非常に高い濃度のL-カルニチンが含まれていること、またそのことから、そこでは多くの脂肪からL-カルニチンによってエネルギーが引き出されて何らかの「長期戦的」な仕事が行われているらしいことについてお話しました。

今回はその「長期戦」がいかなるものかについて探ってゆきたいと思います。

その前に、精子という特殊な細胞について見ておきましょう。

ご承知のとおり、精子はオタマジャクシのような形をしています。

しかし、オタマジャクシはそれ自身数十億個の細胞でできたひとつの完全な生物です。





つまりその数十億個の細胞のひとつひとつに1セットの遺伝子(DNA:ゲノム)が含まれています(ですから、遺伝子は「数十億セット」存在することになります)。

それに対し、精子は頭にあたる部分に2分の1セットの遺伝子を持っているたった一つの細胞に過ぎません。

「2分の1セット」ということは1セット分も持っていないということになります。

最終的には卵子に含まれているもう一対の「2分の1セット」の遺伝子と合わさることによってようやく「1セット」が揃うわけです。

一つの精子細胞は一つの卵子細胞と細胞融合という大イベントを通じて、この1セットのゲノムを完成させます。

その後は、その細胞融合体(受精卵)が分裂を繰り返しながら、最後には60兆個の細胞を持ったヒトという生物がひとつ出来上がります。

ですから、ヒト一人は最初の1セットから順次細胞分裂を繰り返して、成人するまでの間におよそ60兆セットにまで増やしてゆくというわけです。

さて、精子ですが、「形はオタマジャクシそっくりでも、実は一つの細胞に過ぎない」のですが、逆に見れば「たった一つの細胞に過ぎないものが立派な動物と同じ格好をしている」ということでもあります。

事実、精子の頭部や尾部等の構造が「泳ぐ」という機能に関して果たしている役割はオタマジャクシの頭や尻尾の役割ととてもよく似ています。

これはイルカが魚の形と似ていたり、コウモリが鳥の形とそっくりであったりという事情にも通じることかもしれません。

泳いだり飛んだり、という同じ目的を達成するためには例え動物の種類が違っても同じような構造に進化するということです(これは平行進化と呼ばれる現象です)。


次回の更新は6/16(木)です。
カテゴリ : 男性の不妊 : 
2011/06/02 (4:50 pm)
ある仕事をする人が集まるところには決まった仕事があります。

逆に、ある仕事が行われているところにはその仕事をする人々や道具、設備などが集まります。

これを身体に当てはめて考えてみます。

例えば、骨格筋では筋肉運動を行うために大量の脂肪が燃焼して常時エネルギーを作り出しているわけですが、そういうところには脂肪燃焼の仕掛け役である L-カルニチン も他の部位よりもたくさん含まれています。

成人一人の身体に含まれるL-カルニチン量はおよそ20g位だと考えられていますが、このうちの19gほどは筋肉 に含まれています。

血液にも常に一定濃度レベルのL-カルニチンは含まれていますが、血管を流れる血液(とくに血清)が 脂肪からエネルギーを生み出す必要性は少ないので濃度も低く、総量としてもかなり少なくなっています。

1 kg当たりの量で比べると、筋肉には血液中の100 - 200倍ものL-カルニチンがあります。

また心臓では拍動のエネルギーの7割が脂肪から供給されていると考えられますが、ここでは骨格筋よりさらに20%も濃い濃度でL-カルニチンが含まれています(全体としてL-カルニチンの95%以上が骨格筋に含まれるのは、そのL-カルニチン濃度の高さとともに、骨格筋が人体で最大の臓器だということにも理由があります。心臓はせいぜい握りこぶしくらいの大きさです)。





このように見てくれば、 L-カルニチン の「働き」と「量」の関係はある程度説明がつきそうです。

つまり「L-カルニチンのあるところに脂肪燃焼あり」ということです。

興味深いことに、精子細胞の存在するところ(精巣、睾丸、副睾丸、輸精管、精嚢、精液など)には筋肉と比べても10倍も高い濃度でL-カルニチンが含まれています。

同じ体液である血液の実に2,000倍という驚くべき高濃度です。

精子は長い距離を泳いで卵子のいるところまで到達しなければならないのでそれだけエネルギーの消費が多いのだな、と思われるかもしれませんが、実際精液に含まれているものは果糖という糖質やクエン酸など、エネルギーに素早く転換しやすい「短期決戦型燃料」なのです。

それでは何のためにそんなに濃いL-カルニチンが含まれているのでしょうか?

きっと脂肪を燃料にして何らかの「長期戦」が行われているはずです。

次回はその長期戦が何であるかについてお話したいと思います。


次回の更新は6/9(木)です。
カテゴリ : 男性の不妊 : 
2011/05/26 (5:58 pm)
「男性側に原因があると考えられる不妊」については、日本では70万人強がこれに該当すると見積もられています。

さらに、少々意外な感じがするのですが、そのほとんど(90%とも言われています)は、生殖細胞(精子)がきちんと作られないことに起因するのだそうです。

「生殖細胞(精子)がきちんと作られない」というのはどういうことでしょうか。

大まかに言えば次の4点がポイントになります。

(1)一定以上の数があるかどうか

(2) 一定以上の濃度があるかどうか

(3) 真っすぐに泳ぐことができるかどうか

(4) 形態が正常であるかどうか

逆に言えば、これらの条件が全て揃えば、不妊の原因は相当取り除けるということになります。

けれども、例えば「形態が正常でない」ということが原因だとしても、どうすれば正常になるのか、あるいは「真っすぐに泳げない」ということに対してどうすればよいのかはなかなか具体的にわからないと思います。

ところが、身体というものは何であれ主(あるじ)である自分(脳ということでしょう)が、意識的に維持したり管理したりしている部分というものは元々非常に少ないものです。






ですから、精子の運動能力に問題がある、などということになった場合であっても特別にそれだけを狙った対策を立てられるわけではありません。

しかし、ひとつ簡単な解決方法があります。

それは単純な意味で「健康になればよい」ということです。

実は先に挙げた4つの原因は、それぞれ別個のものではありません。

これらの全ては精原細胞という、多数の精子が作られる元になる細胞が首尾よく分裂を繰り返し、変態(細胞が変形すること)を遂げて形を整えてゆくという、一貫したプロセスの流れの中に置かれています。

このプロセスはとても長いもので、1セットの精子細胞群が出来上がるまでには実に65−75日もの時間がかかる大作業なのです。

大作業ですから、それを支える宿主の健康状態がしっかりしている必要があります。

スムースな「精子製造工程の流れ」を乱す原因はある程度わかっています。

特別なものではなく、例えば、疲労、喫煙、肥満、ストレスなどが挙げられています。

疲労、喫煙、肥満などと来れば、これは メタボリックシンドロームの原因とよく似ていることに気付きます。

メタボは生活習慣病ですから、結局、男性不妊の多くも生活習慣病の一種だと捉えることができると思われます。

そして、メタボにおける最初の対策が食養生と 運動の励行、禁煙でありますから、これを参考にすれば不妊傾向の改善にも「ちょっとした生活習慣の地道な改善」によって前述のポイントが(部分的にではなく)一挙に改善される、そういったことに期待が持てそうです。


次回の更新は6/2(木)です。

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