いま手に入れたい健康は何でしょう?
岡田節人先生は発生生物学などで大きな足跡をのこされた碩学です。
先生の『細胞の社会』という本を若いころに読みましたが、その中で細胞というものは必ず「皮膚の細胞」とか「眼の細胞」とか「神経細胞」のような名前がつくものであって「単なる細胞」というようなものはない、という意味のことが書いてありました。
それになぞらえて健康について考えれば「単なる健康」というものはなく「赤ちゃんを産み育てる人の健康」「子どもの健康」「中学生の健康」「中年男性の健康」「更年期女性の健康」「高齢者の健康」といったものがそれぞれ固有にあるはずだと思います。
であれば「単なる健康法」というものもないことになります。
たとえばダイエットにしても朝食を抜く方法、炭水化物を減らす方法、断食をする方法、バナナや納豆を食べる方法・・・すぐにいくつでも浮かんできます。
ここで論争が起こります。
きちんと三食を食べることが大事だ、特に朝食は大事だ、ということを信じている方は朝抜きとか断食などはもってのほかだと猛反対されます。
そして朝食が重要であるということの「エビデンス」を山ほど積み上げられます。
朝食抜き派、断食派はその逆で、これはなかなか決着がつきません。
ちょっと脱線しますが「賃貸が得か持ち家が得か」という論争にも似たところがあり、双方の論者が相手方を論破することにやっきになりますが、これもなかなか決着がつきません。
「単なる細胞」がないように「単なる人間」「単なる日本人」というものが実は存在しない、それぞれにそれぞれの事情がある、なのにそういうちがいを無視してのっぺりとした抽象的な議論に具体的な対策を持ち込もうとする、そこに無理があるのだと思います。
さて、健康の話です。
たとえば「BMIが30を超えるような健康に無頓着なお父さん」というふうに定義したなら、ここは対策が大分はっきりしてきます。
このお父さんが「三食しっかり」食べていては問題なのです。
逆に「75歳を超えたやせ気味のお母さん」であれば、この人に必要なものは「質的にしっかりした、量的にはちょっと控えめな三食」が正解に近いかもしれません。
成長期の中学生は、子どもを産み育てる女性は・・・そのように具体的に考えて行くと自ずと食事の方法ははっきりしてきます(住宅の話なら持ち家か賃貸かはその人の職業やライフスタイル、家族構成、現在や将来の資金力、価値観によって「人の勝手」が基本です)。
というわけで、「現在の〇〇さん」がどういう状態であるのかをまずはっきりさせ、その人が向かうべき健康目標が何なのかを知ることこそがあらゆる健康法に意味を与えることになります。
朝食抜き、低炭水化物、高たんぱく食、三食しっかりきちんと・・・ターゲットさえまちがえなければどれも正しい方法なのです。次回の更新は8/24(木)です。
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