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ダイエットはなぜ健康に良いのか?


 

身体が利用する主な燃料は糖質(主にブドウ糖)と脂質です。


栄養素の全身への輸送は血流を介して行われますので、基本的に血液(水)に溶けない脂質は身体にとって扱いにくい厄介なしろものです。


厄介ではあるのですが、なにぶん燃料としては抜群にコンパクトなので蓄えておくといざというときの絶食状態には最後まで頼りになります。


そこで私たちの体内にはこの燃料を使いこなすためのさまざまな工夫、たとえばグリセリンのように水に馴染みやすい物質と結合させたり、団子状に捏ね上げたタンパク質の塊に埋め込んだりと、実に多彩な「神様の発明の跡」が見られます。


蓄えられていたお腹の脂肪細胞から遠路はるばる血流に乗って筋肉や肝臓の細胞の中まで運ばれてきた脂質は、さらに燃料としての使途を全うするため最終段階として燃焼炉(ミトコンドリア)にくべる必要があります。


この最後の段階もなかなか気を抜けず、非常に水に溶け込みやすいL-カルニチンと結合することによってはじめてミトコンドリアへ入ることが許されます。


つまりL-カルニチンがなければ苦労して筋肉細胞まで連れて来られた脂質も燃焼炉に入れないのです。


のみならず水に溶けない状態の脂質が細胞の中でウロウロしていることは当の細胞にとっては非常に危険な凶器にもなり、高じると燃焼炉(ミトコンドリア)もろとも細胞そのものが破たんしてしまう現象(アポトーシス)を招いて一巻の終わり、です。


もう一つの主要なエネルギー源であるブドウ糖は脂質とはちがって水に溶けやすい小さな分子ですから、これは身体にとってはよほど扱いやすい燃料と言えます。


運搬される場合にも脂質のようにあれこれ形を変える必要も、燃焼炉にくべる必要もなくさっと燃えてくれる、とてもクリーンなエネルギーです。


とはいえ、このブドウ糖も血中にあまりに増えすぎた状態が続くと、様々なタンパク質に錆のようにくっついて赤血球や毛細血管などに不具合が起こってきます。


この現象を糖化反応といい、糖質の多くに共通する困った性質です。


とはいえブドウ糖は数ある糖質の中で最も糖化反応を起こしにくいものですから、昆虫をはじめさまざまな動物はいちばん安全性の高い糖であるブドウ糖を「一番のお気に入り燃料」として使いながら進化して来ました。


ブドウ糖以外の糖では果糖が有名ですが、果糖は非常に甘い反面ブドウ糖よりも糖化を起こしやすいという欠点があります。


過剰なブドウ糖の一部は体内の神経細胞で果糖に変えられ糖化反応に加え活性酸素発生など様々な「わるさ」をします。


これが進むと神経障害が起きてしびれや痛み、筋力の低下などが起こります。


糖尿病は血中のブドウ糖濃度が慢性的に高まる病気で、病状が進行するとこのやっかいな神経障害(糖尿病合併症)を引き起こしてしまいます。


というわけで、脂質よりうんと使いやすいはずのブドウ糖もその濃度があまりに高まってくると身体もこれを持て余しあちこちが糖化反応や活性酸素でトラブることになります。


生命維持に必須なエネルギーであるとはいえ、脂質も糖質も持ち過ぎると色々やっかいなことになります。


ですので身体が備えている「使いこなしの仕組み」を破たんさせない範囲で燃料補給を行うことがポイントになります。


私たちがダイエットに励むべき最も切実な理由はこのあたりにあります。


次回の更新は2/16(木)です。

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