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漢方薬と室内楽


 

西洋医学ではヒトの身体を徹底的に細かく分解して考え、A=B、B=C ゆえに A=Cという方式で疾病の治療を試みます。


いわゆる分析的、科学的、演繹的な手法です。


目下ものすごい勢いで接種されているmRNAワクチンなどはそういった考え方に基づく非常に典型的な西洋型医薬品です。


一方東洋医学の方は帰納的・統合的で、ヒトを精神・肉体も含めて丸ごと理解しようとします。


帰納的なアプローチの場合には理由はわからなくてもとにかくこういうときにはこうすれば良くなった、という経験知に基づくわけですが、そのためには十分な知識のデータベースが必要になります。


この点で、いわゆる漢方薬は膨大な体系を背景に持っていますので、日本でも保険適用の対象となる施療方法として流通しています。


西洋医学では、症状Aを抑えるために医薬品aが、症状Bを抑えるために医薬品bが、症状Cを抑えるために医薬品cが処方されますが、それぞれの副作用を抑えるためにさらにd, e, fが与えられたりします。


かかっている科が同じであればまだしも、外科と内科と皮膚科と歯科で別々に処方されるとたちまち種類が増えて行きます。


最近はこのような弊害はおくすり手帳によって相当改善されるようになっていますが、基本的に過剰処方となるリスクは常に存在します。


ところで、漢方薬はどうかというと、もともとひとつの処方たとえば半夏厚朴湯や補中益気湯という中にそれぞれの数種類の成分が決められた量で配合されています。


私はこの漢方薬の成り立ちは数人で構成された室内楽のようなものに思えます。


室内楽なので楽器や楽譜の組合せはきちんと決められています。


もしたくさんの漢方薬を一緒に服用したとしたらどうなるでしょう。


たとえば甘草という薬草は非常に多くのものに含まれていますが、複数を摂取するとバランスが狂ってきます。


これはたとえば複数の室内楽を同じ部屋の中で一斉に演奏するとワケがわからなくなるようなものです。


西洋薬学の方はあたかもこべつの防音ルームが複数あるようなものなので(これはこれで問題なのですが)そもそもの発想が異なります。


特に漢方薬は症状に合わせて自由に選べるようになっていますから、最も自分が優先したいものをできるだけ少数選んで(できればひとつだけ選んで)服用されるのがよいと考えられます。


食べ物はどうかというと、これはできるだけバラエティー豊かに食べることが基本になります。


次回はこのことについて考えてみたいと思います。次回の更新は8/11(木)です。

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