top of page
paper13.jpg

名力士の早逝

80歳を超えても20本以上の歯を維持しようという主旨で今から30年以上前にはじまったのが「8020(はちまるにいまる)運動」です。

 

電動歯ブラシや歯間ブラシの普及、あるいはすぐれた効能の歯磨き粉の開発などの功績も相まって、この運動の目標はかなり達成されているということです。

 

このことに象徴的に現れていること、それは「身体のパーツは丁寧大切に扱えば相当長持ちする」ということだと思います。

 

逆に言えば粗末で乱暴な扱いをすれば早く寿命が来てしまうという理屈です。

 

現役時代堂々たる体躯を誇った名力士が残念ながら60歳そこそこで早世してしまう例が多いことはこういうことにも関係があると推定されています。


先日寺尾さんの訃報に接して私は改めて健康について考えさせられました。

 

若い力士のミッションのひとつは筋肉と脂肪組織を蓄えて大きな体を作ることです。

 

朝食前のはげしい稽古、その後の大量の食事そして昼寝というパターンはそういった身体を作るために経験的に作られたノウハウの集大成です。

 

早朝には体内に蓄えられた糖質エネルギー(グリコーゲン)はかなり減少しており、そこへ激しい稽古をするとあっという間に枯渇してしまいます。

 

この状況では、少しでもブドウ糖があればそれを細胞に取り込もうとしてすい臓が猛烈に頑張ってインスリンを分泌します。

 

その後のドカ食いでこのインスリンが効きますから、栄養素は旺盛に体内に取り込まれます。

 

激烈な稽古によって筋肉は損傷します。その修復と新たな筋線維の造成に消費されるエネルギーが必要ですが、これも莫大な量になります。

 

ここで昼寝(エネルギーを消費しない状況)をすると、疲労の回復作業とともに身体は取り込んだエネルギー源を逃がすまいと非常な勢いで脂肪の合成に精を出します。

 

毎日これを繰返して行くことであの力士の身体が出来上がって行くわけですが、これは巨大なパワーにあふれた体組成を実現するという目的のためには生理学、栄養学の理に非常にかなった方法だと言えます。

 

ですが、この間に発達するのは専ら筋肉で、あとの臓器(肝臓・腎臓・心臓・すい臓など)はむしろ大きく疲弊してしまいます。

 

引退後30年もすればそれら主要な代謝系、循環器系のパーツは「既定の機能容量」を使い果たしてしまう可能性が高くなります。

 

もちろん力士はそのようにして鍛錬した身体を張りながら独特の美学で人生表現を全うされるわけですから短命であることそのものをどうこう言うことはできません。

 

ただ、かつての名力士が早々と世を去って行かれることはファンとして残念で悲しいことではあります。

 

これはしかし、こと力士に限りません。

 

中年期に顕著になってくるメタボリックシンドロームも肝臓やすい臓に相当な無理を強いている点では力士と変わりません。

 

その結果として糖尿病、腎臓病、動脈硬化などがドミノのようにおこってくるわけです。

 

それを避けるため、中年以降適度な食養生を行うことは(歯をケアすることと同じように)内臓を大切丁寧に扱うことにつながります。

 

たまには思い切って食べたり飲んだりできることは幸せな事です。そのためにも「健康の溜め」をしっかりつくっておきたいものだと思います。

 

かく言う私自身も(例年のごとく)年末年始には食生活も大きくブレてしまいました!

 

もとのペースに戻すことがこれから1月後半のテーマとなります。次回の更新予定は1/18(木)です。

Comments


記事を探す

bottom of page