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からだの中の「厨房(調理場)」としての肝臓


 

食べ物が身体に入ってくるときの「最も上流側」に位置する臓器は何かというと「口にきまっている」と思われるでしょう。 物理的には確かにその通りなのですが、何を食べたいか、どういう順序で食べたいかということまで含めると最初に判断している臓器は「脳」になります。 そして口に運ぶ前に視覚や嗅覚を使って「食べるべきかどうか」が判断されます。 そのあとはじめて口の中に入ってきます。 そこで味覚・嗅覚・歯触り舌触り(触覚)で異常を感じたら吐き出してしまいますので、口腔という関門はやはり入り口として重要です。 その後大まかに辿ると、食道⇒胃⇒小腸⇒大腸⇒肛門という順序で食物は消化、吸収、排泄されて行きます。 一方口から肛門までの管、つまり消化管はトポロジカルにみれば言わば竹輪(チクワ)のようなものですから、すべて「体外」だということになります。 本当の意味で食物が「体内」に入ってくる境界に位置するメインの臓器は小腸です。 小腸から吸収された多くの食物成分はすでにアミノ酸、ペプチド、ブドウ糖、中性脂肪というふうに消化されていますが、このうち脂肪を除く大半の栄養素はまず門脈という通り道を経てすぐに最初のステーションである肝臓をめざして移動を開始します。 肝臓で無数の化学反応にかけられた後、栄養素は血流に乗って回り必要な全身臓器(の細胞)に届けられます。 その間、不要になったものは腎臓で厳密に寄り分けられ尿として体外に排泄もされます。 こんなふうに見てくると、私たちの体内では最も上流に「肝臓」が位置することになります。 ところでヒトの身体を構成する臓器の中で最大のものは筋肉で、全体の重量の4割を占めます。 けれども消費するエネルギーが最も大きい臓器は肝臓であり、その消費エネルギーは全身の3割に及びます。 その後、脳と筋肉がだいたい2割ほど、つまり肝臓、脳、筋肉の3臓器で体内のエネルギーの半分くらいが消費されていることになります。 ともあれ、食物の栄養素の処理ということに関しては肝臓が最も複雑かつ多種類の仕事をこなしているわけで、これは無数の食材が運ばれてくる厨房にも似ています。 有害なものを水溶性に変えて解毒し、排泄に向かわせながら、必要なものはその時々の各臓器の需要に合わせて調理してくれるわけです。 ですから、この肝臓が正常に働いてくれさえすればその下流にあるすべての臓器はいわばおいしいご馳走にありつけるようになるわけで、健康な肝臓を持っているということはそれだけで体内にすぐれた厨房をもっていることを意味します。 逆に、この大忙しの厨房がひとたび異常を来すと他の臓器にはワケあり品のような栄養素ばかりが回ってくることになります。 というわけで肝臓をいたわることは全身の臓器をつつがなくまっとうな栄養素で満たしてあげるために最も大きなポイントになるといえるでしょう。 肝臓は沈黙の臓器と言われるくらい黙々と24時間365日臨機応変な調理作業を続けてくれ、おまけに一部を切り取ってもまたもとに復元するような滅茶苦茶タフでけなげな存在です。 このことを意識して「いまの自分の行動は肝臓をいたわっているのかいじめているのか?」考えながら生活をするだけで相当健康を維持するのに役立つことがわかってきます。 次回はこの肝臓がネをあげる状態について考えてみたいと思います。 次回の更新は9/15(木)です。


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